カナダで車にひかれた話

横断歩道

先日バンクーバー市内で横断歩道を歩行中、車にはねられました。1か月ほどたった今、事故当時の様子、交通事故後の対応や手続き等の全体像を記録しておこうと思います。

人生で初めての交通事故が、まさか海外、そしてバンクーバーに越してきて数か月で自分に起こるとは思っていませんでした。今回は青信号での歩行者であった自分には過失はなく、100%向こうの運転手の責任と言い切れる事故です。幸いにして大事には至らずでしたが、怖い体験でした。

かなり長いので、事故時の手続き内容だけを見たい方は、Contentsより「4.事故後の事務手続きなど」からお読みください。

※なお、属性や事故状況、管轄等により、実際はケースバイケースとなると思いますので、こちらはあくまでバンクーバーで歩行者として事故にあった私一個人の体験談としてのみお読みください。

事故の状況

2025年1月の平日9時過ぎくらい、子どもをデイケア(保育園)に送り届け後、中央分離帯のある2車線+2車線の道路を渡るため横断歩道を青信号で歩いていました(私は歩行者)。その時は他に歩行者はいませんでした。青信号になってから安全を確認し、横断歩道を歩き始めて5~10秒くらいだったでしょうか。左正面の狭い道から直進してくる車がスピードを出したまま突然急カーブで左折して突っ込んでくるのに気づきました。

えっ、やばっ!と思ったときにはもう車が目の前まで来ており、その瞬間でとっさにできたのは、車に正面で向かい、突っ込んでくる車(ジープ)のボンネットを両手で受け止めることくらいでした。たぶん向こうもブレーキ踏んだと思うのですが間に合わず、両手からのインパクトで、後ろに空中を飛び1mくらいは吹っ飛んで、背中から道路に倒れました。

当時、明るい時間かつ天気も薄曇りで視界はとてもよく、完全に相手の不注意でした。急いで曲がろうとしていたのだと思われ、「全く見ていなかった」と運転者本人も認めていました。

事故直後の対応

偶然にも幸いだったのは、その日は冷え込んでいたので、厚いダウンジャケットを着ていて、さらには背中にはリュックを背負っていたため、接地のショックが多少やわらいだと思われることです。はねられた後、意識はしっかりあったので、とりあえず立ち上がって中央分離帯の芝生まで何とか移動しました。両方の手の親指と腰に若干痛みを感じ、両腕を擦ったと思われ腕がヒリヒリしました。流血などはありませんでした。

逃げられたらまずいと思って自分をひいた車に目をやると、路肩に停車し、運転手が中央分離帯までやって来るのが見えました。現場を見ていた別の車のカップルも、その車の後ろに停まってくれました。

運転手は「大丈夫か」「本当に申し訳ない」(北米的にはちゃんと謝ったことに驚き)といい、私もひかれたショックがありつつも「こんなに視界がいいのに、見ていなかったのか?」と言ったところ、先方もそれを認めました。その後、先方の車のナンバープレートを写真を撮って、連絡先として名刺をもらいました。弁護士で、人としては、かなりまともな人ではありました。こちらの名前と電話番号も伝えました。

停まってくれたカップルも車からおりてきてくれて、「Witness(目撃者)が必要だったらいつでも連絡して」と名前と携帯番号を書いた紙をくれました。動転していたので、その車のナンバープレートは控え忘れました。

10分程度やりとりして、私も意識ははっきりしており、大きなダメージはなさそうで救急車まではいらないと判断し、かつ先方の個人情報も収集してその場でできることもそれ以上なかったので、加害者の運転手にもう行っても大丈夫と伝えました。この時、民間同士の事故の時はアメリカと同じで警察はどうせ来ないと勝手に思っていたのですが、後で調べたらどうやら、この時点で911して警察呼んでよかったようです。

その後、現場の状況の証拠がいるかもしれないと思い、一応付近の写真数枚を撮ったりもしました。

Emergency Room(救急)へ

その後、いったん近くの銀行の駐車場に退避して、気持ちを落ち着かせることにしました。右肩から右腕のしびれと痛みが出てきました。

こういった事故直後はアドレナリンがでて大きなケガしていてもわからなかったり、判断能力も低下しているかもと思い、たまたまカレッジの授業が午後からで家にいた妻に電話をし、きてもらいました。そこで妻の意見も聞いて、Uberを呼んで、妻にも一応ついてきてもらって近くの総合病院のEmergency Room(ER)へ行くことにしました。

病院の救急窓口へ自分で歩いて入ってきて「車にひかれたので診てください」っていうのって日本だとまずないよな...と思いながら状況を説明し、受付をしてもらったのが10:00am過ぎ。

聞かれたのは、事故の様子・症状のほか、カナダの公的健康保険MSPの個人番号、事故をICBC(免許証発行や車両登録などをしている政府機関)に報告したか(→してなくても大丈夫だった)という2点でした。ヨーロッパ在住時の経験上、救急の待ち時間の長さは慣れていたので、4~5時間レベルになるだろうなと思い、救急窓口の受付後には妻には家に帰ってもらいました。

詳細は省きますが、ERでは、①ナースによるトリアージュ→②血液検査→③ナースの詳細ヒアリング→④ドクターの問診→⑤破傷風ワクチン(念のため)→⑥痛みのあった右側部分のレントゲン→⑦頭のCTスキャン→⑧再度ドクター→⑨右手CTスキャン→⑩ドクターの診断・説明、と進みました。待ち時間も入れて全部終わったのは4:00pmで、ERに計6時間くらいいました。キャパが追い付いていなので時間はかかりましたが、スタッフも多く、ナースやドクターの対応は、非常にまともでした。

幸いにして、骨や脊髄、頭部にダメージは見当たらず、筋肉のダメージのみという診断。食べ物を持っていなくて、空腹が限界だったので近くのファーストフードでご飯を食べて、帰りは節約のためにバスで帰りました。

事故後の事務手続きなど

カナダで(というか人生でも)交通事故は初めてだったので、救急での長い待ち時間中に色々検索して調べて、事後後にやるべきことを確認し、家に帰ってから下記の手続きをしました。基本ほとんど電話でのやりとりが必要なので、英語が苦手だと結構大変かなぁと思います。

1. 警察への事故報告

事故にあったのはバンクーバーだったので、バンクーバー警察(Vancouver Police Department)のNon-EmergencyのReport窓口に電話しました。この手続きは事故に対して警察が何かしてくれるというよりは、事故報告をすることで警察に公式な記録/証拠として残しておくという目的です。スマホに残しておいたメモを見ながら説明しました。

24時間対応のようで、切り分けの自動音声ではいくつかメニューがあり、パーティの騒音のレポートなども選択肢にありましたが、交通事故を選択。警察官の方が出て、電話上で事故の詳細(日時、場所、事故の状況、加害者の運転手の情報、目撃者の情報など)をヒアリングされました。最後にケース番号が発行され、この番号を使ってICBCに電話するようにアドバイスをもらいました。

2. ICBCへの事故報告

バンクーバーのあるBC州では運転免許証発行でも手続きをするICBCですが、ここが事故手続き対応をしているので、こちらへ電話しました。自動車保有者側だとオンラインで手続きができるようなのですが、歩行者・乗客・自転車としての事故の場合は、電話窓口(24時間対応)へかける必要がありました。

警察と同様、個人情報、事故の状況、加害者側の情報、目撃者の情報などを改めてすべて説明しました。加えて、警察で発行されたケース番号も伝えました。電話窓口の方は、対応に慣れているのか、落ち着いた口調で、かつ事故にあったことに対する気遣いの言葉をかけてくれたりと、非常にプロフェッショナルな感じでした。

ICBCでは2つケース番号が発行されました(1つは事故自体のケース番号、もう1つは怪我(Injury)対応用のケース番号)。この件の担当となるケースマネージャーの名前、メールアドレス、電話番号などを教えてくれ、5営業日以内にフォローアップ電話がくるとのことで電話は終わりました。

※実際3日後くらいにメールと電話の連絡がきました。またその担当の方に同じことを全部説明させられましたが、今回の事故に関して使えるICBCのサービス(後述)について説明を受けました。

3. 加害者の運転手へEメール

これは必須ではなかったと思いますし正直迷ったのですが、ICBCにレポートを上げるとICBCから先方にも連絡がいき先方も同様にケースを上げなければいけないはずなのと、訴訟や賠償請求をしたくなった場合に備えて一度コンタクトしておいたほうが良いと思ったので、警察とICBCに交通事故ケースを挙げた旨だけ、メールしました。

相手は、弁護士(しかもなんと交通事故対応や訴訟を扱っている弁護士でした 笑)だったので、恐らく訴訟になっても不利にならないようにだと思いますが、Yes, understood.みたいな最低限の返信だけきました

事故後の治療費用等について

ICBCは運転免許証発行やナンバープレート登録だけをやっているイメージだったのですが、実は正式名称はInsurance Corporation of British Columbiaで保険会社の立ち位置。恐らく公的健康保険MSPに加入しているという条件付きだと思いますが、交通事故後の費用負担サポートの保険の仕組みが結構手厚くついていました。

交通事故にかかわる費用は個人のプライベート保険を使うか、相手方に対する訴訟や交渉等でまかなわなければいけないかと思っていたので、これは意外かつポジティブなサプライズではありました。

※参考ICBC公式サイト

1. 治療・リハビリ費用

ケースマネージャーの判断によりますが、今回の場合は、一定の額がPre-approvedで承認され、その額までは特に事前申請なしで、ICBC負担にて治療・リハビリが可能と電話で説明を受けました。詳細は、ケースを挙げた2日後に来たメールに書かれていました。サマリーすると下記のような内容でした。

  • 12週間の間、下記の範囲で様々な治療にアクセスが可能
  • ただしBC州に正式認定されている医療機関であること
  • 治療にあたって医師の紹介やICBCの事前許可は不要
  • ICBCへの申請に対応しているクリニック・病院であれば、医院側がICBCに直接請求するので、患者側の立替払いは不要

内容はケースによるらしいのですが、私のケースは下記のような内容でした。 

Type of practitioner: Number of approved treatments: Standard treatment fees covered by ICBC Minimum treatment times
Physiotherapist
(理学療法士)
25 $93 20 minutes
Chiropractor
(カイロプラクティック) 
25 $61 15 minutes
Registered massage therapist
(マッサージセラピスト)
12 $94 45 minutes
Kinesiologist
(キネシオロジー)
12 $92 45 minutes
Psychologist
(心理カウンセラー)
12 $228 50 minutes
Clinical counsellor
(臨床心理士)
12 $140 50 minutes
Acupuncturist
(鍼灸師) 
12 $104 20 minutes

この金額をオーバーする分は、自己負担か個人の保険を使うかとなります。私は、右腕・肩・腰の痛みが結構強く残っていたので、家の近所の理学療法クリニックに行くことにしました。理学療法士により週1でリハビリという判断になったので、$93×12週=$1,116まではICBCに負担してもらえます。$100/回なので差額の$7.00だけ毎回払っていますが、大部分を負担してもらえるのは本当に助かりました。事故のショックなどによる心のケアの必要な人は、心理カウンセラーまで使えるみたいです。

2. 通院にかかる交通費

事故後の通院に必要な交通費もオンラインからICBCへ請求できます。自分の場合は、自宅から歩いて行けるクリニックにしたので、事故当日のER(救急)への交通費往復だけ請求しました。

本来は電車・バス・車のガソリン代だけが対象だったみたいですが、知らずに行きのUberの申請をしてしまったら電話がかかってきました。ただヒアリングの結果、事故直後の状態でバスを乗りついでER(救急)に行くというのは現実的ではないという点を考慮してもらえたのか、今回だけは対応してくれるということになりました。

ちなみに車両登録がないとオンラインで振込先銀行口座を登録できないらしく、小切手が郵送で送られてきました

事故発生時にした方がよいこと 

個人の体験から、交通事故発生時にしておいた方が良いかなと思った点をまとめておきます。

  • 事故後に相手方の個人情報を必ずもらうこと(氏名、住所、連絡先、車のナンバープレート番号、できればInsuranceの情報や運転免許証の写真など)。
  • 同様に、現場にいた目撃者からも個人情報をもらっておくこと。先方と見解が食い違ったときのために、証言者がいることは超重要。
  • 事故が発生したら、必要と判断したらその場から911警察/救急にかけてよい
  • 一見大丈夫そうでも、念のためERや病院に行くこと(特に頭、首、背中を打っている可能性がある場合)
  • 後々のために、事故の様子や当日の動き、体調などを時間ベースでメモで記録しておく
  • 現場で警察を呼ばなかった場合、後から警察に連絡して事故報告を上げて、公式記録を残し、ケース番号を控えておく
  • ICBCに事故申請を上げて、ケース番号を控えておく。
  • ICBCのカバレッジで使える治療・リハビリのサポートサービスは必要に応じて使う。
  • ICBCの保険カバーが意外と手厚いが、治療が高額になりそう・長期化しそうと思われる場合は、加入している保険会社にも早めに連絡をいれる。

まとめ

ということで、バンクーバー市内で青信号の横断歩道歩行中に車にひかれた話でした。あまりポジティブな話ではないので書こうか迷ったのですが、事故後に自分が色々調べたときに車の事故は出てきたのですが、歩行者として被害にあった情報があまりありませんでしたので、何かの役に立てばと思い残しておくことにしました。

この事故が、子どもが一緒の時でなくて本当に良かったです。

※本件は、個人の体験に基づいたものです。実際にはケースバイケースで、状況や内容により、対応が異なるとは思いますし、もしかすると別にとるべき行動もっと良い対応方法があったかもしれませんので、あくまで個人の体験の一例としてご覧ください。